松谷みよ子作品


 

 

  福島實推薦図書       2015(平成27)、4
  松谷みよ子全集1から           
           
No. 作 品 名   内      容   私のおすすめポイント
           
1 貝になった子ども   おゆうさんの子の弥一は、畑からの帰り行方不明になってしまう。悲しむおゆうは、ある日弥一らしい子どもたちを見つけ後を追い、海の見える崖っぷちにたどり着く。すずめが言う、「弥一は幸せ、白い貝になった。心のきれいな子はまた生まれるまで白い貝になっているの。」   子を亡くした母親の心の悲しみは計り知れません。でも最後は明るい心になります。
           
2 ポプラのかげで   ルーモは声がいいので音楽会に出ることになりました。衣装がないので、死んだ母の若かったころの絹の着物をほどいて作り替えようとしています。目をひとつひとつほどくたびに、おかあさんが想いでと共に現れます。   亡くなったお母さんの、優しい心が伝わってきます。
           
3 机といす   ファーボは妹のルーモのために机やいすをたくさん作りました。ミニュチアのおもちゃですが、久しぶりに帰ってくるルーモをよろこばせようと。ところが修学旅行に行っている間に一つもなくなってしまいました。   なくなった机やいすが多くの人を幸せにしてくれました。
           
3 白いお部屋   都会に出て働いてる女の子の部屋は、白いお部屋です。古いので窓が10㌢ほど開いています。それでも白いお気に入りの部屋。大嵐の夜、怖くて眠れません。ふるさとの冷たい水とお母さんに会いたいと思ったら、なんと。鳩が…これは夢でしょうか。   夢でしょうか、現実でしょうか。せめてケーキを家族で食べてから覚めてほしいですね。
           
3 とかげのぼうや   トカゲの好きな坊やがトカゲを集めました。お母さんは気持ち悪がって逃がしてしまいましたが、坊やは病気になってしまいました。トカゲは心配して集まって尻尾を振ったりして励ましたりしました。   子どもの世界ですねえ。
           
4 スカイの金メダル   いたずら者スカイが勉強を始めました。理由は金メダルが欲しかったからです。ある下校途中の日、電車を降りたスカイは見知らぬカラスの国に連れて行かれます。   夢ではない?ゼフィヤからすが金メダルを届けてくれました。本当だったのかも。
           
5 三つの色   ファーボ3色の油絵の具を手にいれました。ある晩、青色の精が夢の世界に現れ、本当の青い色を見せてくれると連れて行ってくれました。次の日は赤い色の精です。妹のルーモも一緒に行きたくてたまりません。ファーボは、いい絵を描いてくれると言います。   きれいな色彩感覚豊かな物語です。
           
6 五郎のおつかい   「けちくさいなかまになっちゃいけないよ。みんなのけちくさいのをほうっておくのもいけないよ。勇気を出してやってごらん。」おばあさんの家から、お母さんのために味噌を運ぶ途中の、五郎は、雲と不思議な体験をしたのです。   強い男の子になるために絶対読んでほしい。
           
7 うさぎの残念賞   おひな様祭りのために、ウサギの一家が餅をつきました。あべかわもちを食べたいので、きなこをお手伝い残念賞の一番小さいウサギの子が行くことになりました。無事買ってこれたので、みんなでぱちぱちほめました。   「みんぱち」と言う、仲間意識を醸成する手段がありますが、この物語もそうですね。
           
8 お日さまお日さま   世界一大きなケヤキの下の家に住む6歳の男の子とおばあさん。病気になった男の子は、太陽の光が欲しいと言います。ネズミ、蝶々、すずめ、がお願いしてもケヤキは動くことすら出来ません。このままでは、男の子の病気は・・・   安物の犠牲的精神であまり好きでない。君ならどうする。
           
9 じょうろになったお姫さま   わがままし放題のお姫さまは、バラの妖精によってじょうろにされてしまいました。なのにわがままは治らず一人ぼっちは変わりません。花屋のおばあさんは、黙々と働きみんなを喜ばせます。いつしか、じょうろもそんな生き方をしてみたくなりました。   生きるということは、人の役に立つことをすることなり。結果、我が身を肥やすことになる。
           
10 作品覚え書き
 松谷みよ子
   18さいころに書き出した。太平洋戦争末期の千歳にて潜水艦の計ってきた水深の誤差を訂正していた私は、こっそりメモ用紙に童話を書くようになった。「じょうろになったお姫様」だ。
 戦災で家を失い疎開。長野県下高井郡平野村。そのころの日常生活のなかから生まれた。「スカイの金メダル」「貝になった子ども」「お日さまお日さま」
 焼け跡の東京に戻って、「白いお部屋」「机といす」「三つの色」「五郎のおせっかい」「うさぎの残念賞」
 「あなたはなぜ童話を書くのか?」と、指導者(関英雄・岡本良雄・猪野省三)に問われ、消え入りそうに「書きたいからです」。と答えた。
 坪田先生のお力で「貝になった子ども」が茜書房から出版され、児童文学者協会の第1回新人賞を受けた。
           
11 松谷童話のこと
 坪田譲治
1971年5月18日
 

 「貝になった子ども」「ポプラのかげで」に二作は、アナトール=フランスとか、アントン=チエホフなどという人の作品の中にまじっていても、おそらく疑いをさしはさむ人はないだろうと思います。(最初の童話「貝になった子ども」に書いた序文から、昭和26年9月)
 松谷文学の主題について
第一に「母が子に対する愛情」であり、「子を愛する母の歌」とでもいうべきもの。「貝になった子ども」「ちいさいモモちゃん」
つぎは「子が母に対する愛情」であり、「子が母を思う愛の歌」であります。「龍の子太郎」
 童話というものは、子どもがかわいくてうたった子守歌のように、愛情をもって語りきかせた、あの昔話であります。愛情のこもった文学であります。松谷さんはその点でも生まれながらの作家であることを示しております。